障がい者雇用の現状と課題

ダイバーシティ、多様性という言葉をよく見聞きするようになりました。年齢、性別、国籍など、さまざまな価値観が交わることで、職場は活性化。業績も向上するとして、注目を集めています。

職場の多様性には、障がい者も含まれます。年々、障がい者雇用率は高まってますが、まだまだ課題が多いのも事実です。

今回は障がい者雇用の現状についておさらいしつつ、これからの課題について確認していきましょう。

民間企業の法定雇用率は2.3%

一定の割合以上、障がい者を雇用することが障害者雇用促進法で義務付けられています。その割合を法定雇用率といい、43.5人以上規模の民間企業は2.3%、公的機関や独立行政法人は2.6%、都道府県の教育委員会は2.5%です。身体障がい者、知的障がい者、精神保健福祉手帳を交付されている精神障がい者が雇用義務の対象になります。

障害者雇用促進法は、障がい者の雇用促進だけでなく、職業リハビリテーションを通じて職業の安定を図ることも目的としています。令和5年4月からは雇⽤促進に加え、職業能⼒の開発及び向上に関する措置を⾏うことが明記され、キャリア形成の⽀援を積極的に行うことが企業に求められるようになりました。

なお、常用労働者の総数が100人を超える企業が法定雇用率を達成できない場合、不足する障がい者数に応じて1人月額5万円の納付金を収める必要があります。

令和4年度調査では、障がい者雇用数は過去最高を記録

厚生労働省が行った令和4年の調査によると、民間企業に雇用されている障がい者は613,958人。前年より16,172人増加しています。実質雇用率は法定雇用率に届かない2.25%ではあるものの、19年連続で障がい者雇用数は過去最高を記録しました。

障がい別にみると、知的障がい者と精神障がい者の雇用数が増加。特に精神障がい者は、前年比11.9%増と大きく雇用率を伸ばしました。

産業別にみても、全ての産業で実雇用率が増加しています。その中でも医療・福祉の実雇用率は2.89%と高く、全産業の中で1位です。また、鉱業・採石業・砂利採取業、生活関連サービス業・娯楽業、農・林・漁業、電気・ガス・水道や運輸業といったインフラ関連業でも法定雇用率を上回っており、障がい者雇用が進んでいることがわかります。

次に、公的機関の障がい者雇用数、実雇用率を見ていきましょう。国が9,703人(実雇用率2.85%)、都道府県は10,409人(2.86%)、市町村が34,535人(2.57%)、教育委員会16,501人(2.27%)、独立行政法人12,420人(2.72%)と、市町村と教育委員会は法定雇用率を上回っていませんが、おおむね近い割合になっています。全てにおいて障がい者雇用数、実雇用率は前年を上回っており、公的機関でも障がい者雇用が促進されていることがわかります。

中小企業の障がい者雇用促進が大きな課題

民間企業で働く障がい者は増えていますが、法定雇用率を達成できている民間企業は48.3%。半分に満たないのが現状で、障がい者雇用に積極的に取り組んでいる企業と、そうでない企業の差が開いています。その差は企業規模という視点から見ると明確になります。

1000人以上の企業規模では62.1%の企業が法定雇用率を上回っているにも関わらず、43.5~100人未満の企業規模では、45.8%の企業しか上回っていません。また、100人未満の企業規模では障がい者を1人も雇用していない企業、いわゆる0人雇用企業も多く、法定雇用率未達成企業の58.1%を占めています。

大企業で法定雇用率を上回る企業が多い理由に、特例子会社の存在があります。特例子会社とは障がい者の雇用に特別な配慮をした子会社のことであり、特例子会社で雇用した障がい者数は親会社の実雇用率に算入できます。

企業規模が大きい場合、仕事を切り分けて特例子会社に集約することが可能です。また、切り分けられた業務も多くなるため、障がい者の特性にあった仕事を割り振ることもできます。

一方、中小企業の場合、1人が複数の業務を兼務していることが多く、仕事の切り分けが困難。加えて、障がい者の特性にあった仕事を用意できるとも限らないため、障がい者雇用が進まない要因となっています。

障がい者雇用促進には現場の準備や教育が必要

障がいの内容や程度によりますが、障がい者雇用を進める上では、現場の準備や教育が不可欠です。今まで障がい者と一緒に働いたことがない場合、どう接していいかわからないという人も多く、現場が混乱しがちです。

社内研修を実施して障がい者雇用の重要性や必要性を理解してもらう、障がい者はかわいそう、助けなければいけないといった考え方を改めることから始めましょう。また、障がいの特性に応じた教育方法が必要なことも多いため、設備を整える、仕事の進め方を見直すといった準備も必要です。障がいの特性にあった業務を、適切な方法で指導すれば、障がい者は企業の戦力となります。

中小企業では教育、費用、設備投資などが負担となり、障がい者雇用に踏み出せないという現実もあります。

障がい者雇用コンサルタントにお気軽にご相談ください

障がい者雇用を増やしたいが、何から始めたらよいかわからないという方は、ぜひ障がい者雇用コンサルタントにご相談ください。業種、仕事内容によって最適なプランが異なるため、状況を丁寧にヒアリングしてから、アドバイスをいたします。