中小企業の障がい者雇用が進まない理由と課題

令和4年の厚生労働省の調査によると、民間企業で雇用されている障がい者数は過去最高を記録しました。確実に障がい者雇用が進んでいるとはいえ、その大半は大企業です。中小企業では法定雇用率に到達していない企業も多く、1人も障がい者を雇用していない企業も数多く存在しています。

今回は中小企業で障がい者雇用が進まない理由と、今後の課題についてみていきます。

受け入れの準備の負担が大きい

障がい者を雇用しようとした際、会社の設備や業務のルール、働き方について見直しを迫られることが多々あります。たとえば、車椅子利用者の場合、車椅子でも使えるトイレやエレベーターなどの設備が必要になります。知的障がいや発達障がいがある人に仕事を引き継ぐ場合、今まで別の人が行っていた仕事をそのまま渡すことが困難なケースが多いでしょう。指導方法も障がいの特性に合わせる必要があり、専門の支援員を手配することもあります。また、精神障がいがある人の中には、フルタイムで勤務するのが困難な人も多く、時短勤務制度などを導入する必要もあるかもしれません。

障がい者雇用は健常者雇用と比較すると、どうしてもコストと手間がかかります。障がい者雇用に関する助成金もありますが、余裕のない中小企業にとってはハードルが高いものです。

障がい者の特性にあった仕事を用意できない

事務補助や軽作業、清掃などが障がい者に割り当てられがちです。大企業ではまとまった仕事量になるため障がい者を雇用できるのですが、中小企業の場合、人を雇うほどの業務量にならないことがあります。また、中小企業では1人が複数の業務を兼務していることがあり、障がい者が取り組みやすい定型的な業務の切り分けも困難です。

一方、障がいは人によりさまざまなため、定型的な業務ではやりがいを感じられず、退職していく人もいます。中小企業では障がい者の特性にあった適切なレベル、量の仕事を用意することが困難であり、指導する余裕もないのが現状です。

今以上に採用を増やせない

既に障がい者雇用を進めている企業が、さらに障がい者雇用を増やそうとしても、支援員などの受け入れ準備が整わない、周囲のサポートの負担が大きい、適切な業務が用意できないという理由で、採用を増やすことができていません。

今後の課題

どのような課題が解決できれば、中小企業の障がい者雇用が促進されていくのでしょうか。

・従業員に障がい者雇用のメリットについて説明する
経営者が障がい者雇用に積極的でも、現場で一緒に働く従業員に理解がなければ、障がい者雇用は進みません。多くの場合、接し方や指導法がわからない、準備などの負担が大きいとイメージだけで敬遠されています。

経営者は法律で決まっているからという受け身な理由だけでなく、障がい者と一緒に働くことで得られるメリットや必要性について、従業員にメッセージを出し続ける必要があるでしょう。たとえば、今まで外部に委託していたり、派遣社員に任せていたりした業務を企業で雇用した障がい者に依頼できれば、インフラ等を共有できるためコストカットが実現できます。また企業内で業務が完結するので、スピード感が増すほか、品質も統一でき、知見やノウハウも社内に蓄積されていきます。

・支援機関に相談する
人事担当だけで障がい者雇用を増やそうと頑張っても限界があります。障がい者雇用に詳しい支援機関に相談し、アドバイスをもらうことがおすすめです。支援機関によっては、定着支援も行ってくれるため、企業の負担を大きく減らすことができます。

身近なところでは、ハローワークでも障がい者雇用に関する助言や助成金の案内をしています。また、地域障害者職業センター では、カウンセラーやジョブコーチなどが配置されているため、障がい者雇用について相談が可能です。就労移行支援事業所では、職業訓練や面接対策などを行い、障がい者の就労をサポート。就職後も企業を訪問してサポートしてくれるため、障害者、企業ともに気軽に相談ができます。

・雇用支援制度などを活用する
受け入れ準備等、費用面で不安がある場合は、助成金や自治体からの奨励金の活用を検討してみてください。代表的なものに障がい者の適性を確認できる「トライアル雇用助成金」、週20時間未満の障がい者を雇用する事業主へ支給される「特例給付金」、障がい者を正規雇用すると支給される「キャリアアップ助成金」などがあります。

・障がい者のキャリアアップについて検討する
健常者のキャリアパスは明確に考えられていても、障がい者のキャリアパスについて考えられている企業はまだまだ少ないのが現状です。どのように評価したらよいかわからない、異動や配置転換をさせていいのかなど、不安も大きいものです。

しかし、適切に評価されないことは仕事の満足度を下げます。障がい者のキャリアパスを明確に提示することで、企業としての魅力も高まるでしょう。

障がい者雇用コンサルタントにお任せください

これまで障がい者雇用は、CSR(企業の社会的責任)、社会貢献の意味合いがメインでしたが、今はSDGs(持続可能な開発目標)の視点にシフトしてきています。障がい者雇用は、
多様な人材が活躍できる職場作りでもあり、イノベーションが生まれるきっかけにもなります。

何から始めたらよいかわからない、という段階で構いません。お気軽にご相談ください。