障害者を支援する上で大切な5つのポイント

障がい者が、生き生き、ワクワクして未来に希望を持って働けるようになってもらうためには、支援員や指導員、支援スタッフの存在は欠かせません。

その支援者側の心構えや必要なこと等を今回、書かせていただきます。

障がい者の支援員や指導員、支援スタッフは、本当に自分自身を磨くことができる、そんな素晴らしい仕事だと思っています。

<たいせつなこと1>

障がい種別に惑わされることなく、一人一人と向き合う!

 

 

 

以前、訪問型のジョブコーチを私が勤めていた会社に派遣してもらったときのことです。

3人の障がい者に、4人のジョブコーチがシフトを組んで、そのうちの1人のジョブコーチが、ほとんど指導も話もせず、後ろの席に座ってただ見ているだけでした。

私は何か1つでも指導もしくは、支援してほしいと思っていましたが、ほとんど何もせずに見ているだけでした。

初めてジョブコーチお願いしましたので、ちょっと面食らっていました。

そのジョブコーチが帰り際、3人の障がい者のうち、○○さんは、このような障害傾向が見受けられますね、もう1人の○○さんは、このような障害の傾向が見られますと、自分の見立てを言って帰りました。

2回目に来た時もほとんど指導もしくは支援もせず、後ろに座っているだけで、帰り際同じように自分の見立てを話されて帰りました。

こちらとしては、障害の見立てはどうでもよく、障がい者の指導の仕方や支援の仕方を間際に見て勉強したいとも思っておりましたので、このようなジョブコーチもいるもんだなぁと思いました。

別のジョブコーチは、手順書通りに作業を行っているかどうかを熱心に見ていて、間違っていると指導されていました。

本当にジョブコーチによって、いろいろなタイプがいるなぁと思いました。

これは、私は、障がい者と関わった初期の頃で、その後、知識や経験を積み重ねるうちに、だんだん気づいたことがあります。

それは、障がい種別に惑わされることなく、一人一人と真剣に向き合って、その障がい者の個性や、強みをいかに発見できるか、そこに注力して伸ばしてあげるかが一番大事だと言うことをがわかってきました。

障がい者であろうが健常者であろうが、これは変わりません。

それを、指導員、あるいは、支援員が見つけられるかが、障がい者のパフォーマンスや成長に大きく関わってくることと思います。

要は、できないことに目がいくのではなく、肯定的な部分に目を向けることができるか?

できないことに意識が向くと気分も滅入ってきますが、肯定的な部分に目を向けると、こちらの気分も良くなってきます。

いろいろ大変なこともあるかと思いますが、ぜひ、このポジティブな視点に目を向けることをやってみてください。

毎日の積み重ねが大切です。

ポイント

障害種別に惑わされることなく、一人ひとりの障がい者にいかに向き合い、個性や強みを発見できるかが重要。

<たいせつなこと2>

障がい者の可能性を120%信じきる!

少しでもできないところに目が向くと、やっぱり無理だろうなぁとか難しいだろうなぁと頭が先行してしまいますが、それが支援にも大きく影響します。

私は、コーチングを教える(身に付けてもらう)講師もしていることから、コーチングマインドの重要性を身に染みて感じています。

コーチングマインドとは、相手のことを100%認め、相手の無限の可能性を信じることです。

どんな相手だろうが、コーチとして、このマインド高く持って、関わっていくことになります。

私は、無限と言う事を重要視して、さらに信じるだけではなく信じきるとして、120%としています。

日頃、障がい者には、必ずできるようになるからとか、頑張ろうねとか励ましたりしているのではないでしょうか。

でも、障がい者の支援に関わって、何度も同じことを言ってもできないとか、毎回同じようなことを聞いてくるとか、だんだん難しいなと思ったりしていませんか?

絶対にそういうことを思ってしまうと、相手に伝わり、それが、パフォーマンスを大きく低下させる原因になってしまいます。

ぜひ、支援や指導する側が、このコーチングマインドのように、相手を信じきることを念頭に置いて支援してみてください。

あなたにもきっとできるはずです。

ポイント

障がい者のできることに目を向け、120%可能性を信じきること!

<たいせつなこと3>

支援者側の存在は大きい!

NRIの調査レポートを見ますと、定着支援があるかないかでは、大きく定着率が変わって来ます。

 

入社3ヶ月後は、定着支援がない場合の定着率は、71.0%ですが、定着支援があると、90.3%になります。

入社1年後になりますと、定着支援がない場合の定着率は、52.6%ですが、定着支援があると、73.2%に上ります。

また、障がい者総合研究所の調査によると、退職してしまう時は、誰にも相談せずに辞めてしまう人が大半のようです。

退職理由は、トップが、障がい者への理解や配慮が足りないですが、二番目に多いのが、相談できる人、場所、機会がないことです。

支援、もしくは指導しても、障がい者が、何度も同じことを聞いてきたり、やってくれなかったりしたら、支援者は、落ち込んだこともあると思います。

時には、自分は障がい者の支援は、向いていないのかなあと、頭をよぎったりすることもあるかと思います。

でも、上記のデーターのように、あなたの支援があるからこそ、障がい者の定着率が高くなっているのです。

私も、障がい者雇用全般を任せられたときには、人事異動で、当初面食らっていましたが、障がい者と向き合っていく中で、こちらの方が教えられたりしたことが何度もあり、純粋な障がい者と関わっていくと、人間としてのあり方を問われたりして、大きく学ばさせていただきました。

会社員人生の中で、一番、学びが大きく、充実した時期でした。

会社側も、障がい者の法定障がい者雇用率は重要な指標であり、この指標が未達だった場合は、障がい者雇用納付金を支払わなければなりません。

よく、納付金を払った方が、雇って人件費がアップするよりいいということを耳にしたりしますが、最近では、SDGsの関連銘柄に投資してしている傾向を見ますと、株価に影響したり、企業イメージにも影響してきます。

ですので、支援者がいることで、障がい者の定着率がアップすると言うことは、企業側へ大きく雇用率で貢献していることになります。

障がい者との日ごろの人間関係が、障がい者が辞めてしまいたくなったときに、支援員もしくは指導員、支援スタッフに相談できる人間関係づくりが大切になって来ます。

支援員、指導員だからと言って、上から目線で関わるのではなく、単なる役目に過ぎず、お互い一人ひとりの人間と言う立場で関わることです。

上下関係はなく、一対一で向き合うことを念頭に置いていただければ、強固な人間関係づくりができると思います。

是非、頑張ってみてください。

ポイント

支援者がいるからこそ定着率が高くなる、支援者の存在は大きい!

<たいせつなこと4>

支援内容や方法は無限にある!

障がい者が、何度も同じことを聞いてきたり、何度指導してもうまくいかないことがあったりします。

つい、「何度も言ってるよね」と口に出してしまいたくなったりします。

私も、外部の支援者に教えられたのですが、このように何度も聞いてきたりするのは、

「まだまだ自分の工夫が足りないと言うことを、障がい者が教えてくれている」と言うことです。

私も初めて知的障がい者と関わった時に、このように、何度も教えたことを聞いて来ても、この教えを受けてから、気持ちが変わりました。

このようにネガティブなことが頭に浮かんだときは、「いかんいかん、私の教えにもっと工夫が足りないんだと教えてくれているんだ」と思うようになりました。

こちらが忙しい時に同じことを何度も聞いてきたとしても、以前は、つい、イラっとしてしまいがちでしたが、これを念頭に置くようになったときに、そのように心が冷静になりました。

「もっと自分に、工夫が足りないと教えてくれている』

すると、不思議なことに、考えれば考えるほど良いアイデアが浮かんでくるものです。

支援、指導されている皆さんも、同じことが多々あるかと思いますが、そんな時はこのフレーズを頭に思い浮かべてみてください。

工夫すると言うことを考えれば考えるほど、たくさんのアイデアが出てきます

支援者側の人格やスキルも格段にアップしてきます。

特に、私が言いたいのは、障がい者に対しては同じようなことを求めているのにもかかわらず、支援者が、今の状態に甘んじていて、勉強もあまりせずに、工夫をしようともしないことです。

支援員側はロールモデルと思わなければならないと私は思っています

やはり、役割的に上に立つ方が、ロールモデル(模範)とならなければ、障がい者は、その期待に応えられないと思っています。

これは、支援者が大きく学べる機会となりますので、ぜひ、やってみてください。

ポイント

もっと工夫が足りないんだと教えてくれている。

<たいせつなこと5>

障がい者の支援者は、重責を担っている!

皆さんは、(ピグマリオン効果)と言う言葉をご存知でしょうか?

ピグマリオン効果とは、

教育心理学における心理的行動の1つで、教師の期待によって学習者の成績が向上することである。 ウィキペディア

支援もしくは指導されている側が、どのようなマインドで、障がい者と関わっているかが、障がい者のパフォーマンスに大きく影響すると言うことです。

先ほど、書かせていただいた、コーチングマインドと関連しますが、障がい者ができると信じて支援もしくは指導するのと、やっぱり無理だよねぇとか、難しいだろうなぁと思って関わるのとでは雲泥の差が生じます。

ですので、支援者の役割は大きいと言うことです。

それだけ重責を担っていると言うことになります。

決して、重荷に感じる必要はありません。

支援者側も人間的に大きく成長することになるわけですから。

障がい者の支援に携わっている方々の中で、ボランティア的に関わっている方も多くいらっしゃいます。

特に、企業を引退された方が携わっており、そういった方々とお話をすると、一口に、この仕事について良かったと言っておられます。

企業の中では、いろいろ業務を担ってきたが、最後に障がい者雇用に携われて、これは天命だと言われる方が多いです。

それで、退職した後も障がい者の支援に携わっているのです。

私もこのような方々と接すると、本当に学ぶことが多いです。

80代になってもボランティア的に携わっている方々を見ると、頭が下がる思いです。

このようなことからも本当に人生の勉強をしているなぁと思い、深く感謝しております。

ですので、決して無駄ではなく、人生の上で、とても大切なことを学んでいると思ってください。

皆さん方の支援は、社会貢献にもなっていますし、皆さん自身の、人間的な成長につながっているからです。

私も、障がい関係に誘われることができて、本当に幸せに感じています。

期の途中で人事異動で障がい者センターを3ヶ月で立ち上げなさいと言われたときには面食らいましたが、会社員人生の中で、上記のように、最後にこの業務に就かせていただいて本当に感謝しています。

皆さんも、支援に向いていないのかなーなんて感じたら、以下のように自分に問うてみてください。

自分はどうしてこの障がい者の支援に携わることになったのか?

あるいは、自分に何を期待されているのんだろうか?

ポイント

障がい者の支援に携わることで、自分を大きく人間的に成長させてくれている。

障がい者支援現場でのコーチング活用事例をご紹介

障がい者支援現場でのコーチング活用事例をご紹介

障がい者支援の現場でコーチングってどうやって活用できるの?

そんな声を聞く機会が最近特に増えてきました。
ここでは具体的に活用事例をご紹介いたします。

 

活用事例ケース1
知的障がい者には難しいとされていた社内派遣でも仕事ができるようになった

ポイントは、キャリア面談の際の質問です。

・そもそも、なんで働きたかったの?

・社会人になって周りの人はなんて言ってくれる?

・3年後はどうなっていたい?

・これからどんなことにチャレンジしてみたい?

このような質問をしていく中で、他部署でも仕事をしてみたいと話してくれました。

(障がい者は、特定な部署で仕事をするケースが大半)

なぜ社内派遣としてで働きたいのか聞いてみると、かっこいいからとのこと。

社内派遣として働ければ、仕事がどんどん広がっていきます。

まずは、トライアルから始めました。

一生懸命がんばり、支援員もいない中、直行直帰で、仕事ができるようになりました。

本人が、やりたいと言う意思を尊重した結果、できるようになった好事例といえます。

コーチングのポイントとしては、100%答えは相手の中にあると言うことにつきます。

活用事例ケース2
自閉症のメンバーが人前でプレゼンできるようになった

1人ぶつぶつ独り言を言いながら、オフィスの周りは歩いているメンバーがいます。

朝礼は、当番制にして、メンバーにやってもらうようにしていますが、このメンバーだけ避けてやろうとしませんでした。

普通なら、自閉症なので合理的配慮から、させなくてもいいかなと思いますが、それでは、いつまでたってもできるようにならないため、次のような質問をしました。

「これまで避けていた朝礼当番ができるようになったらでどんな気持ちになりますか?」
「朝礼当番は主役です。あなたも主役になれたら嬉しい?」
「一言だけだったらやってみませんか?」
始めは、一言二言でしたが、だんだんできるようになり、それが今では、お客様の前で業務を紹介するなど、プレゼンができるようになりました。

自閉症だから無理だと勝手な判断はせず、本人の意思を尊重し、できるようになった事例です。

この事例は、相手の感情に寄り添った質問から始まりました。

コーチングのポイントとしては、相手の感情にフォーカスしたことによります。

活用事例ケース3
支援員スタッフの面談が改善された依存傾向から脱却

この支援員は、熱心なのは良いのですが、障がい者との面談に2時間以上費やし、場合によっては、職場の近くのファミレスで2時間近く面談したりしていました。

本人は、私が何とかしなければと言う熱い思いは良いのですが、これはどうかなぁと思いました。

そこで、この支援員にコーチングを使って話しをしました。

あなたは、どのような思いから支援をしているのですか?

どのような支援が理想的だと思いますか?

何とかしてあげたいと思う気持ちは大切ですが、今の支援はどう思いますか?

支援されている障がい者の方はあなたはどのように思っているでしょうか?

他の障がい者からは長い時間面談をしているあなたを見てどのように思うでしょうか?

もしあなたが人事異動で職場を異動することになったら、今支援している障がい者はどうなるでしょうか?

ようやく本人は気づいたようで、面談時間も事前に決めて臨むようになりました。

コーチングのポイントとしては、提案やアドバイスをせず、相手に考えさせることにあります。

活用事例4
知的障がい者がPDCAを回しながら、次々と目標を達成するようになった

PDCAを回すなんて、知的障がい者には難しいのではないかと周囲から言われていました。

それは、自分で計画をして、それを達成するためにプロセスを考え、途中チェックを入れながら行動を起こすことが必要だからです。

確かにはじめのうちは、目標を達成させるためのプロセス(方法)を考えるの手間取ったりしましたが、1年かけてじっくり取り組んだ結果、素晴らしいプロセスを考えられるようになりました。

特に、障がい者は、プロセスで考えた方法を、一つ一つチェックをするのが好きな人も多いので、やり方次第で上手くいくのです。

コーチングのポイントとしては、コーチングマインドであることは言うまでもありません。

コーチングマインドとは、100%相手を信じきって関わっていくことです。

これがないと、方法論だけやってもうまく成果は出ません。

可能性を信じ切って、一年じっくり関わる覚悟が必要です。

コーチングマインドは、とても重要です。

活用事例5
電話応対が難しいとされている発達障がい者が、内線、外線とも電話対応ができるようになった。

配属先の現場マネージャーは、ミスの多い発達障がい者に手をこまねいていた。

そこで、人事担当者が、コーチングの質問を使って面談を行った。

人事担当者:どのような仕事ぶりをしたいですか?

本人:仕事場を任されるようになりたい。

人事担当者:では、どうしたらいいと思いますか?

本人:信頼されなければならないと思います。

人事担当者:そのためには何をしなければならないと思いますか?

本人:少しでもミスを減らさなければならない。

人事担当者:ミスを減らすためには何をしたらいいと思いますか?

本人:わかりません。

人事担当者:それでは、どんなときにミスをしてしまうかわかったらどう思いますか?

本人:願ってもないことです。

人事担当者:それでは、原因を突き止めましょう。

本人:はい。

そこで、約3週間預かり、どこでミスをするのか記録をつけながら突き止め、ミスが生じる前に、確認を行うことで劇的にミスが減るようになりました。

これを見た現場マネージャーは、やり方次第ではミスが減るのだと気づかされ、そこから、本人との接し方が変わりました。

電話対応もして貢献したいとの事から、現場マネージャー自ら、OJTを行い、今では内線、外線とも、電話対応ができるようになりました。

コーチングポイントは、答えは相手の中にあるです。

改善策を提示するのではなく、何をしなければならないかを、本人に考えてもらうことです。

本人が考えたことは、自ら行動に移しやすいと言うことです。

これが決め手となりました。

オススメの本

夢みるチョコレート工房―働く喜びをつくるということ

著者:伊藤 紀幸

著者自身も、知的障害を持つ息子さんがいて、日本での知的障がい者の賃金があまりに安いことに、その将来を案じ、2012年、チョコレート工房「ショコラボ」を開業する。

悪戦苦闘しながらも、ものづくりの面白さや福祉ビジネスの在り方、息子への愛情など、様々なテーマが詰まった一冊。

特に、コーチングに関する内容が書かれており、コーチングは、障害を持つ方にも、とても有効とのこと。

社会起業を目指している方や福祉に関わっている方、あるいは、特別支援学校の先生など、たいへん勇気付けられる一冊である。

 

アスペルガー症候群の人の就労・職場定着ガイドブック 適切なニーズアセスメントによるコーチング

著者:バーバラ・ビソネット/著 梅永雄二/監修 石川ミカ/訳

アスペルガー症候群の人たちの就労や職場定着を支援する上で、キャリアカウンセラーやジョブコーチはどうコーチングを行えばよいのか。その理論や具体的な方策を、豊富な事例をもとに臨床的に紹介した一冊。